あらすじ
裕福な家に生まれ、財産に守られて育った景司は、長らく何不自由ない生活を送っていた。だが時代の流れにより資産は目減りし、投資は失敗し、親しい者の裏切りにも遭う。景司の胸を最も強く締めつけたのは「貧乏への恐怖」であった。貧しさを知らぬがゆえに、その影を大きく膨らませ、自らの存在すら揺らぎ始める。やがて景司は、働き暮らす人々の姿に触れ、財産に代わるものの価値に気づく。財産を「守る」のではなく「使う」ことで人を支え、人に支えられて生きる喜びを得た。売れ残りの野菜を乾燥加工し、子ども食堂や定食屋に届ける事業は、多くの人の笑顔を生み、町の暮らしを温めた。晩年、景司は「財産は使ってこそ生きる」と語り、人々に敬愛されながら静かに人生を閉じる。金持ちであることに悩み、恐怖した景司が、やがて財産を超えて心の財を築くまでの感動の物語である。