あらすじ
「貴方の読んだ悪役令嬢ものは、実は過去の文豪からの贈り物かもしれない」
西暦2055――
「異世界転生」を題材にした物語は、ついに「国家によって禁止」された。
若者の自殺や逃避を助長するという理由で、ラノベは「現実逃避罪」に問われ、
電子上の全ての異世界作品がAIで自動削除される時代。
異世界転生を扱った作品が悪書とされ、書いた側も持っている側も処罰される。
出版社の編集者・島崎塔子〈しまざき とうこ〉は、
かつてラノベを愛していた最後の世代だった。
けれども今や、彼女のデスクに並ぶのは純文学全集と検閲報告書だけ。
創作の自由が奪われた世界で、
“物語を守りたい”という想いだけが、彼女を動かしていた。
そんなある夜、過労で倒れた暦の前に、
「小説の神」を名乗る存在が現れる。
「文学世界の均衡が崩れた。文学が痩せ、想像力が死にかけている。これは、web小説を始めとする、ライトノベルが増えすぎだことが原因である。お前に使命を与える――過去へ行き、このことを伝え、文豪たちの目を覚まさせるのだ。」
小説の神に導かれ、暦は明治時代の文豪・芥火竜太郎〈あくたび りゅうたろう〉のもとへ転送される。
だが――彼女は致命的なミスを犯した。
彼女が話した、ラノベに文豪が興味を持ってしまい…。
竜太郎はその軽妙な文体と奔放な想像力に魅せられ、
「これぞ新文学だ!」と、ラノベ風小説を書き始めてしまう。
その結果、未来は歪む。
本来、文学史に残るはずだった名作『まごころ』が生まれず、
暦の両親――その作品を通じて出会った二人――の存在が
少しずつ“消えていく”タイムパラドックスが発生する。
崩壊していく写真。
記憶の空白。
暦は決意する。
「文豪がラノベを書くなら…… 私が、文学を書く!」
塔子は竜太郎の代わりに『まごころ』を代筆し、未来を取り戻そうとする。
そして純文学が完成。
しかし、今度は純文学だけが溢れかえる世界線になってしまう。
そうなると、本来生まれるべきだった、アニメなどの作品が生まれないという世界に。
かつて見たアニメがすきだった恋人との出会いもないという世界線になる。
そこで、塔子は小説の神に頼み、2013年にタイムスリップする。
彼女は、こっそりと文豪が書いたのラノベを、匿名で投稿サイトにアップのだった。