あらすじ
「月5万円のプロポーズ」
――五万円で、幸せは買えるの?
ワンルームの窓の外、
ネオンが冷たく光る夜。
あなたの指輪よりも、
家賃の数字がまぶしく見えた。
「うちと同じでいいよ、月五万」
あなたは笑って言う。
その笑顔はまるで、
母親の台所から抜け出してきたみたい。
私は知っている。
電気代が季節で変わることも、
食費が心で揺れることも、
孤独が時々、冷蔵庫の中に沈むことも。
愛している。
けれど、
愛は明細書に書けない。
あなたの「普通」と、
私の「現実」が、
すれ違う音がした。
それでも――
あなたが初めて、
自分の部屋で米を研いだ夜、
水音が優しく響いた。
あの音を、私はたぶん、
未来の約束と呼びたい。
五万円では足りないけれど、
あなたとなら、
「ふたりの暮らし」を始められる気がした。
指輪の光より、
あの夜の蛇口の音が、
いまも胸に残っている。