あらすじ
夏の終わり、大学生の栗木義人は、亡き祖父の遺品を整理するため九州の実家へ帰る。
押し入れの奥から見つけたのは、時の色に染まった一冊の手記。
その最初の一行には、未来を想うような不思議な言葉が綴られていた。
ページをめくるうちに、義人の心はいつしか遠い昔へと引き寄せられていく。
焼けつくような太陽、油と草の匂い、そして若者たちの笑い声——。
戦争のただ中でも懸命に生きようとした人々の姿が、手記の向こうに息づいていた。
その中には、まだ少年の面影を残す一人の青年がいる。
名は栗木義雄。
国のために空へ飛び立つ運命を背負いながらも、
仲間との絆を信じ、誰かの未来を想って微笑む男。
読めば読むほど、義人はその青年に惹かれていく。
彼が感じた迷い、恐れ、そして覚悟。
まるで、時を越えて心が通い合うような感覚が胸に広がっていった。
夏の終わり、ふと手記を閉じたとき、
義人は確かに何かを受け取った気がした。
それが言葉だったのか、祈りだったのかは分からない。
ただ、空を見上げた瞬間、風の向こうで誰かが微笑んだような気がした——。