あらすじ

遥か昔、 世界はまだ名もなく、形もなく、 ただ光と影の霧が、果てしなく漂うだけの時代があった。 その霧の深奥から、二つの意志が芽吹いた。 一柱は光の神ルミナス。 創造と秩序を司り、形を与える者。 一柱は闇の神ノクス。 終焉と無を司り、静寂を包む者。 光は闇を映し、闇は光を包んだ。 ニ柱の息が混ざり合い、 霧はゆっくりと揺らぎを得た。 その揺らぎこそが、最初の“脈動”だった。 まだ命ではない、 ただ「在ろうとする」だけの、原初の震え。 ルミナスはその震えを見つめて言った。 「この揺らぎは形を求めている。 世界に境を与えよう。上と下、明と暗、限りと秩序を。」 ノクスは静かに応えた。 「形は崩れを呼ぶ。 境を設ければ、そこに苦が生まれる。 世界は静寂のままであるべきだ。」 光は広がりを望み、闇は包みを望んだ。 ニ柱の想いがぶつかると、霧が震え、 その摩擦の中から最初の火が生まれた。 火は霧を照らし、そこに影を落とした。 光と影の境が定まり、 やがて空と大地の原型が形づくられていった。 しかし、火は止まらなかった。 それは燃え広がり、光と闇を裂き、 霧を沸き立たせて海の原型を生んだ。 その時、世界は初めて“形”を持った。 だが、その形は激しく脈打ち、静寂を拒んだ。 ノクスはそれを見て嘆き、 ルミナスはそれを抱きしめようとした。 光は形を求めて押し広がり、 闇は静寂を求めて押し返す。 空は裂け、大地はうねり、火は海に沈んだ。 七日目の暁、 ニ柱の神は互いを打ち砕いた。 ルミナスの身体は砕け、 その骨がイルゼリア大陸となった。 ノクスの血は流れ、 その闇が果てなき海を満たした。 そして、光の名残が星々となり、 闇の吐息が夜をつくった。 世界は「光の亡骸の上」に息づき、 「闇の静寂の中」に揺らめいている。 だが今もなお、 海の底ではノクスの瞳が眠り、 それが瞬く夜、潮は紫に染まり、 光はわずかに震える。 古の教会はこう記す。 「光の死は終わりではなく、 闇の眠りは沈黙ではない。 二つの息は今も大地の奥で交わり、 その響きこそが――イルゼリアの残響なり。」

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カクヨム
カクヨム2025/10/14
  • 現在の作品イルゼリアの残響(仮)