あらすじ
或る日、一匹のゴブリンが帽子を拾う。いや。拾うというには語弊があるかもしれない。正しく言えば、『殺して奪った』のである。だが、それは彼等にとっては拾うと同義だろう。
無論、悪逆非道たるゴブリンにその行為に対する罪悪感はない。彼らは刹那的に暴力を振るい、村落を襲い、人を攫い、姦し、拷問する。そこには嗜虐と愉悦しかない。誰もがそう考えているし、事実その通りだ。
然し、運命の悪戯か、その帽子に込められていたのは『賢さ』のステータスを上げる魔法だった。
それによって、幸福か不幸か、知恵と共に罪悪の概念を得た小鬼は自ら所業を自覚してしまう。それも自らが手を掛けた冒険者の死体を前にして。
突如としてのしかかる罪悪感に打ちひしがれたゴブリンは自ら命を絶とうとするが、冒険者の一人にまだ息がある事に気付く。彼女が死に掛けているのも自らの罪であるが、それを救えるのもまた自分しかいない。されども其処は二百匹のゴブリンが潜む廃坑の地下深く。
ゴブリンは、いや、彼は決意した。自死すらも許されぬ罪悪を背にした小鬼の贖罪を。