あらすじ
夜の帳が降りる頃、
古都・朱雀(すざく)の街は
静寂に包まれていた。
風が渡るたび、どこからともなく
鈴の音が響く。
それはまるで、遥か昔に交わされた
“誓い”を呼び覚ますようだった。
千年の時を越えても、
この地には“陰と陽”が息づいている。
表の光に寄り添うように、
闇が存在し──人の心の隙間に潜み、
時を待つ。
その夜、少年は夢を見た。
燃え上がる社、崩れ落ちる楼門、
泣き叫ぶ誰かの声。
そして、白い衣の少女が月の下で微笑む。
彼女の瞳は、夜よりも深く、
炎よりも儚い光を宿していた。
「――また、会えるよね?」
声が消える瞬間、眩い光が世界を呑み込んだ。
目覚めたとき、彼の掌には一枚の
御札が残されていた。
墨のような黒い符に刻まれた名は──
『藤咲 天音』。
それがすべての始まりだった。
陰と陽、命と死、過去と現在。
すべてが交わる運命の糸は、
いま再び月下で絡み合う。
これは、ひとりの陰陽師と、
幼なじみの少女が歩んだ、
“魂を賭けた恋の記憶”の物語。