あらすじ
その力は、英雄譚を紡ぎ、その代償は、英雄の存在を世界から消し去る。
臆病な少年フィン。彼が唯一願うのは、誰の記憶にも残らず、平穏に生きること。
しかし、彼の意に反し、その異常な『幸運』は死地で奇跡を呼び、彼を**『灰色の賢者』**という、顔のない伝説へと祭り上げる。
――その伝説を信じた、一人の女騎士セラフィナとの出会いが、彼の運命を決定的に変えてしまう。
彼のパニックは『神託』と誤解され、彼の生存本能は『非情な策略』と読み解かれる。彼は、逃げれば逃げるほど、英雄としての名声を高めていくという、残酷な矛盾に囚われる。
そして、奇跡の代償が、彼が初めて守りたいと願った絆さえも、容赦なく忘却の彼方へと追いやることを、彼はまだ知らない。
これは、世界で最も孤独な英雄の、勘違いと悲劇に満ちた、ダークファンタジー叙事詩。