あらすじ
昭和六十三年、終わりゆく昭和と共に、あるテレビ番組が一度だけ放送された。
タイトルは『地獄で会いましょう』。
出演者は、見たこともない新人アイドル。
その歌は神がかり的で、放送を観た人の多くが“心臓が一瞬止まった”という。
だが翌日から、番組の存在は跡形もなく消えた——。
時は流れ、令和。
オカルト雑誌〈月刊ネクロム〉のライター・中野千吉は、この番組を追って奔走していた。
ようやく見つけたのは、当時の制作に関わったという元テレビマン・韮山秀樹。
彼の口から語られるのは、昭和末期の芸能界の珍騒動だった。
倒産寸前の弱小プロダクション「光映プロ」が、
「地獄でもいい、うちの事務所から奇跡のアイドルを出せ!」という社長の無茶ぶりにより、
本当に“地獄へスカウト”に行ってしまう。
書類をなくす事務員、意味不明な神主プロデューサー、そして何より地獄の関係者たちの手続きが遅い。
昭和のバブル景気と地獄の官僚主義が混ざり合って、現場は大混乱。
「奇跡のデビュー」は果たして夢か悪夢か——
いや、ただのバラエティだったのかもしれない。