あらすじ

食事とは、正しい感想を求められるだけの苦痛な義務。 旧華族に連なる名家令嬢、姫宮綾乃(ひめみや あやの)。完璧な作法と微笑みの裏で、彼女は誰にも言えない秘密を抱えていた。――ストレスで、すべての食べ物の味がしないのだ。 そんな綾乃の世界を変えたのは、同じ大学に通う食物学科の学生、春風奈月(はるかぜ なつき)だった。彼女の、本当に美味しそうに食べる、神聖な儀式のような「ひと口目」。その姿に、綾乃は失われた食の『楽しさ』を取り戻せるかもしれないと、一縷の望みを抱く。 「もしよければ、その楽しそうを、少しだけ分けていただけませんか?」 これは、救済や治療の物語ではない。 「おいしい」という言葉を失った世界で、「澄む」「丸い」「近い」といった自分だけの語彙を探す旅。湯気、温度、触覚、そして丁寧な合意(コンセント)を重ねながら、二人が新しい食卓を“共同制作”していく、静かで、どこまでも濃密な関係の物語。

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カクヨム
カクヨム2025/10/13
  • 現在の作品あなたにこの味を教えてあげるー無味の食卓で微笑む令嬢と「一口目」の姫