あらすじ
ブラック企業で心身ともに疲弊したOL・橘花(たちばな)は、ある夜の残業中、倒れ、そのまま意識を途絶えてしまう。目を覚ますと、そこは見知らぬ緑の森の中。どうやら異世界へ転生してしまったらしい。与えられたスキルは、戦いとは無縁の「薬草鑑定」と「おもてなし」。絶望する彼女だったが、前世で趣味として培ったハーブ・薬草の知識を手がかりに、「薬草茶カフェ」を開業することを決意する。
見つけた廃屋を少しずつ改装し、田舎の村外れで「癒しの香(かおり)」と名付けたカフェを始めた橘花。最初は珍しさで人が来るだけだったが、彼女の静かな優しさと、体を労わる薬草茶・おもてなしの一杯に、次第に人々が惹かれていく。傷ついた冒険者や悩みを抱える村人、政争に疲れた貴族……。多様な悩みをもつ人々を受け入れ、橘花はただ「人を癒す」ことだけを淡々と行う。
やがて、村でも遠方でも、密かに「癒しを与える聖女」と呼ばれるようになる。だが、彼女自身はその称号を意識しない。ただ静かに、日々、客を癒やす。そんな中で、橘花自身が抱えていた「自分など価値がない」という思いも、次第に揺れ動き始める。けれど、彼女を慕う人々との交流のなかで、橘花は少しずつ、自分自身の居場所と、本当の幸せを見つけていく――。