あらすじ
伯爵令嬢アイリスは、家族にも婚約者にも愛されない、孤独な日々を送っていた。
妹のソフィアは、派手な光を操る「輝く聖女」として王都の寵愛を集めていたが、アイリスの魔力は地味で目立たない「生命の活性化」のみ。努力は虚しく、婚約者である王太子ジルベルト殿下からは「地味で無能な魔力は国に不要」と価値を否定され、王都の政務を担う献身的な働きも「取るに足らない雑務」と一蹴される日々だった。
そして、ついにその日は訪れる。
ソフィアを陥れたという濡れ衣を着せられ、ジルベルト殿下から大広間で婚約破棄を突きつけられたのだ。「愚かで浅はかな判断は、いつかあなた方を破滅させる」――最後の矜持を見せて広間を去ったアイリスを待っていたのは、実家からの冷酷な見捨てだった。
「お前のような恥を晒した娘はもう要らない」「ソフィアのような輝く才能を持てなかったお前が悪い」。両親やソフィアからの哀れみと嘲笑は、アイリスの心に残っていた最後の温もりすら凍らせた。
こうして、アイリスは極寒の辺境の地ソルティエラへと、誰にも見送られることなく追放される。彼女の人生は、絶望の淵で終焉を迎えるかに見えた。
凍てつく辺境の雪道で力尽きかけたアイリスを、運命は決定的に変える。
彼女の目の前に現れたのは、辺境の領地を治める「氷の公爵」カシウス・フォン・グランツベルクだった……