あらすじ
「ご主人が、事故で…」
警察官の言葉を聞いた瞬間、私は笑いそうになった。
夫・拓也が死んだ。38歳、浮気常習犯のモラハラ夫が。
生命保険5,000万円。住宅ローンは団信で完済。遺族年金。そして「かわいそうな未亡人」という完璧な立場。
離婚すれば貧乏になる。でも結婚生活は地獄だった。そんな八方塞がりの状況から、夫の死が私を解放してくれた。
葬儀では完璧に泣いた。演技だけど。
参列者200人が私に同情した。誰も私の本音に気づかない。
義母は優しく、友人は心配してくれる。
「美咲ちゃん、辛いでしょうけど頑張ってね」
ありがとうございます。でも私、全然辛くないんです。
むしろ最高です。
保険金が振り込まれた日、私は一人で乾杯した。シャンパンを開けて、誰もいない部屋で笑った。
「ありがとう、拓也。死んでくれて」
資産運用、海外旅行、自分磨き。夫がいない人生は、驚くほど自由で美しい。
でも、拓也の遺品から見つけた手帳には意外な言葉が――
「美咲、最近元気ないな。ちゃんと話を聞かなきゃ」
彼も私のことを、気にかけてくれていた?
葬儀で泣いたのは演技。でも墓前で流した涙は、本物だった。
これは、夫の死を喜んだ女の物語。
罪悪感と解放感。感謝と憎しみ。
人間の本音を、タブーを、剥き出しにした短編小説。
道徳?そんなもの、知らない。
私はただ、自分の人生を取り戻しただけ。
あなたは、この妻を許せますか?
全5話完結。一気読み推奨。