あらすじ

――声を失った世界で、ただ一人、彼女だけが歌う。 深い森の祠で、少年は目を覚ました。 名も記憶も持たぬその少年は、自らを〈アハト〉と名づけ、霧に包まれた村へと辿り着く。 そこは、誰も言葉を発することのない静かな村――。 畑を耕す人も、子どもたちも、誰ひとりとして声を持たない。 だが、ただ一人。 エリスという少女だけが“声”を持っていた。 その声は美しく、あたたかく、聞く者の心を癒す不思議な力を宿している。 けれど村人たちは彼女を祝福しながらも、どこか恐れていた。 “声”がこの村に災いを呼ぶ――そんな古い言い伝えとともに。 言葉を交わすことが許されたのは、エリスとアハトの二人だけ。 静寂の中で紡がれる笑顔、食卓の温もり、風に混じるささやかな声。 やがてアハトは、胸の奥に眠る奇妙な違和感に気づき始める。 なぜこの世界には音がないのか。 なぜ自分は、祠の中で目覚めたのか。 そして、エリスの声を聞くたびに蘇る、どこか懐かしい“記憶の残響”。 静かな日々の裏で、少しずつ、世界が動き始めていた。 “声”とは何か。“沈黙”とは誰の意思か。 やがて二人は、その答えを求めて、失われた神話の中へ踏み出していく――。 静寂と祈りの狭間で、少年と少女が出会う。 声が罪となった世界で、彼らの物語は始まる。

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小説を読もう2025/10/12
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