あらすじ
かつて日本の大手広告代理店で全てを手に入れた男、狩野 悠(かのう ゆう)。一つの「黒い灰」の過ちにより地位も名誉も失った彼は、追われるようにしてカンボジアの首都プノンペンへと逃れた。
今は、安価なローカルタバコ「アンコール」を売る小さな雑貨屋の店主。過去を葬り、名前を捨てて、熱と塵の中で静かに生きることを選んだ。
しかし、彼の隣には、彼の人生とは真逆の輝きを放つ女性がいた。小さなクイティウ(米麺のスープ)食堂を切り盛りするリム・ソカー。彼女は、日本に出稼ぎに行った弟からの仕送りの証である「白いメビウスの空箱」を宝物のように大切にし、家族の未来を信じてひたむきに生きていた。
ソカーの純粋な「希望」に触れ、再び人として生きる喜びを知る悠。しかし、その喜びは束の間、ソカーの平穏な日常にまで、日本から来た「過去の影」が迫り始める。