あらすじ
春の夜、城下町の奥深く――吸血鬼の名家・久木野邸に、一人の男が侵入した。
名は影島《かげしま》世那《せな》。人ならざる白髪と紅い瞳を持つ、元人間の吸血鬼だ。
本来、主人がいるはずだが、世那には己を吸血鬼化させた主人はいない・親なし吸血鬼と呼ばれる存在だ。
親を持たず眷属にもなれず、国家により“保護・管理”される立場にあり、捨て駒として軍に組み込まれる運命を背負っている。
だがその夜、彼は突如として邸宅へと侵入し、執事たちと交戦の末に倒れる。
目を覚ましたとき、世那は銀の枷に繋がれていた。が、その場所は罪人を捉える場所としてはあまりにも不可思議だった。
まるでホテルのような豪華な一室。そこでは、なぜか人間らしい生活の“形”は与えられた。
戸惑う世那の前に現れたのは、久木野家の嫡男にして吸血鬼の真祖――久木野《くぎの》利津《りつ》。
冷徹で、支配者の気配を纏った男は言い放つ。
「俺のものになれ」
世那は何も分からないでいた。
なぜ自分はこの屋敷に侵入したのか、命を奪われなかったのか。
なぜ、利津は世那を「所有」しようとするのか。
世那には記憶がない。ただ一つ、確信しているのは《自分の意志ではなかった》ということ。
そして、自分を吸血鬼に堕とした“真祖”が、まだどこかにいるという事実。
混乱と葛藤の中、世那は屋敷での異様な日常を生きることになる。
人間のように扱われながら、吸血鬼として縛られる日々。
次第に精神は蝕まれ、血への渇望が理性を脅かしていく。
国に捨てられ、誰にも望まれなかった“親なし吸血鬼”と、
吸血鬼の王たる男――久木野利津。
二人の運命が交錯したとき、静かに動き始める陰謀の歯車。
そこにあるのは救いか、隷属か。それとも……。
◆
ダークファンタジー×バトル×吸血鬼×主従関係。
「人ならざる者」として生きる青年が、「人間であること」を貫こうと葛藤する、濃密で耽美な物語。
人間でも、吸血鬼でもない――
曖昧な“自分”を取り戻すために、影島世那は久木野利津と相対する。
BLの枠を超えた先にある、本当の愛の物語。
「眷属にしたいと思ったのは、お前が初めてだ」