あらすじ

『人間嫌いの悪役令息 世界一周ピースボートクルーズに参加してみた』

出航の朝
銀の髪の青年は、海を見ていた
「この旅が終われば、また人を嫌いになれるだろう」
そう思っていた

だが――
海は、あまりに広く、静かで、
嫌うには優しすぎた

アロハの老女が笑いかける
「あなた、風の匂いを知ってる?」
彼は答えない
けれど夜、窓を開けて
その風を 少しだけ吸い込んだ

喧騒の港で 少年を助けた夜
彼は初めて“ありがとう”と言われた
胸が、妙に熱くなった
そんな感情、要らないはずだったのに

平和を語る人々を嘲ったとき
老女の目に、涙があった
「私はね、昔、生徒を戦争で失ったの」
沈黙だけが、返事になった

孤独な令嬢に恋をして
裏切られて気づいた
――自分こそが、誰よりも孤独だったと

嵐の夜
AIが沈黙し、船が悲鳴をあげる
青年は叫んだ
「頼む、もう一度応えてくれ!」
だが返事はなく
人間たちの声だけが、闇を裂いた

朝
雲の切れ間から光が差し
船は無事だった
彼は濡れた甲板で、空を見上げる
「人は愚かだ。けれど、美しい」
頬を伝う滴が、雨か涙かは分からなかった

南極の白
静寂の中で老女が言う
「あなたは人間嫌いじゃない。
 愛され方を知らなかっただけ」

その言葉が、
凍った心にひびを入れた

帰港の日
青年は港に立つ
かつて嫌っていた世界の音が、
今は懐かしく響く

「悪役でいい。
 ただ、人を理解できる悪役でありたい」

海は今日も、どこまでも続いている
――彼の中にも、同じ海が生まれていた

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アルファポリス
アルファポリス2025/10/11
  • 現在の作品人間嫌いの悪役令息 世界一周ピースボートクルーズに参加してみた