あらすじ
大学の帰り道、横断歩道で赤信号が滲んだ──次の瞬間、目を覚ますとそこは蝋燭の灯る石造りの部屋。
鏡に映るのは、教科書で見たあの顔。
そう、転生先は──数学者フェルマー。
彼の机には、あの有名な一行が残されていた。
“n>2のとき、Xn+Yn=Zn を満たす整数解は存在しない”
──そして、その下に「だが、この余白は狭すぎる。」
〈演算能力〉〈解読〉──頭の中に次々と現れるスキルたち。
だが彼(僕)は気づく。
この時代には、証明を語る“言葉”がまだ存在しないことに。
数式の海に沈む天才の家で見つけたのは、粉糖の香りがする恋文だった。
論理と感情のあわいで、フェルマー(=僕)は最後の一行を書く。
──それは三百五十年後に届く、ひとつの「余白への返事」だった。