あらすじ
『悪役令息 ― 離婚届とざまぁの花束』
白い封筒が届いた朝
湯気の消えた味噌汁の前で
彼女は息を呑んだ
「あなたを恨んではいけない」と
母は言ったけれど
指先が震えるたびに
愛が紙の角で切り裂かれていく
遠くの街では
彼は誰かの腹を撫でている
「責任を取る」と
正義の仮面で、愛を葬る
それでも彼女は
静かに産声を抱きしめた
小さな命のぬくもりが
どんな裏切りよりも確かなものだった
季節が巡り、
灰色だった空が群青へ変わる頃
彼女は立ち上がった
涙を資本に、未来を編み直す
会議室の硝子に映る自分は
もう“妻”ではない
勝者でも、被害者でもない
ただの――自由な人間
「あなたの愛を、ありがとう」
彼女は笑って言った
その言葉が、最も冷たいざまぁだった
春
花束のように風が香る
子どもの笑い声が
新しい世界を呼んでいる
そして
かつての“悪役令息”は
その音の届かぬ場所で
静かに自分の罪を数えていた――