あらすじ
人の持てる力をはるかに超えたその能力で他者を蹂躙(じゅうりん)し、血肉を生きたまま啜(すす)り、命を自らの力とした上でさらに屠(ほふ)り続ける。
魅魎(みりょう)――魅魔(みま)、魅妖(みよう)、魎鬼(りょうき)、妖鬼(ようき)が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しているこの世界にあって、人は、あまりに非力な存在だった。
魅魎は主に人の生気を食べる。
人が、他の生き物を世界から搾取(さくしゅ)するように、それらは人から生きる力を奪い取るのだ。生きたまま肉を裂き、苦鳴の中で血を啜るといった行為は、自らの力を誇示し、愉悦に浸るための、単なるおまけでしかない。
だが自分たちを凌駕(りょうが)する力を持っているからといって、諦め、それをこの世界の定めとして受け入れられるわけがない。
魅魎にもてあそばれ、その気まぐれに翻弄(ほんろう)されるがままの存在であるなどということが、この世界において人間の位置するところであるとされるのならば、それは人にとって、この世界に生きるということが果てしなく絶望的な、到底堪えられるはずのない苦痛でしかないではないか。
獣に牙があるように。
逃げ延びるに足る俊足があるように。
人は、やがて自らの中に魅魎に抵抗するための力があることを知った。
もちろんだれにでもというわけではない。
魅魎を封じ、なおかつその命を永遠に絶つ力を生まれながらして備えた物。
意思を持つ生きた剣・魔断(まだん)と心を通じあわせ、ともに魅魎から弱き人を護る者。
彼らは退魔師と呼ばれていた。