あらすじ
大手出版社に勤めて三年になる多部春生は、入社後初めての異動でBLコミックの編集部へ行くことに。早速担当作品のドラマCD収録に同行することになり、何もかも慣れないことばかりの世界に戸惑う多部。やがて収録が始まる直前になってスタジオへやってきた声優は、ちょうど五年前、学生だった多部の家に居候していた男——嘉住良太だった。
当時道端で行き倒れていた嘉住を多部が拾い、成り行きで半年間ほど続いていた同居生活は、嘉住の突然の失踪によって終わっていた。それから嘉住とはずっと音信不通で、偶然の再会に多部は驚く。しかし嘉住のほうはというと、多部とはまるで初対面かのように振る舞ってくる。調べてみると、五年ぶりに再会した嘉住は今では人気の若手声優として業界でも名を馳せており、アニメにゲームにドラマCDにライブにと引っ張りだこなのだという。声優業界についてあまり明るくなかった多部は、五年前とは見違えるほど立派になっていた嘉住の姿に驚きつつもどこか納得していた。
きっともう自分と彼とでは住む世界が違うのだろう……遠い存在となった嘉住を前に、どこか諦めのような気持ちを抱く多部。ところが、そんな彼の口から思いがけない言葉が飛び出す。
——「ねぇ、おれたちまた一緒に住まない?」
◆カクヨムでも同作品を連載中です。