あらすじ
『悪役令息の離婚劇 ― 義父、現る』
―― 詩 ――
皿の上の味噌汁が
冷めていく音がした。
妻の沈黙が、壁よりも厚かった。
俺は、外の風ばかり気にしていた。
家の中の小さな嵐には、
気づかないふりをしていた。
ある朝、玄関に新しい靴。
義父の笑顔は、春の光のようだった。
鍋の蓋が鳴るたびに、
娘の笑い声が混じる。
「じいじー」
その一言に、胸の奥が軋む。
あの人が幸せそうだ。
俺のいない家で。
一か月が過ぎて、
テーブルの上に白い紙。
インクの匂いが、冷たく刺さる。
「あなたは、何もしなかった」
その言葉が、すべてだった。
愛は飾るものじゃない。
背中を並べて洗う皿のように、
手を伸ばすたび、形になるもの。
残った泡を見つめながら、
俺は静かに思う――
「やり方を、知らなかっただけなんだ」
でも、もう遅い。
食器の水音の向こうで、
義父の声と、
娘の笑いが
やさしく溶け合っている。