あらすじ
悪役令息 ウジヤの破滅フラグ回収
『聖域に触れた指(ゆび)』
白い廊下を、光が走る。
硝子に映る自分の影を見て、
ウジヤは笑った。
「この手が、世界を変える。」
沈黙のサーバー室。
冷気の奥で、
赤い警告灯が脈打つ。
まるで神の鼓動のように。
指先が、禁忌の鍵盤に触れた瞬間、
静電気が皮膚を貫いた。
痛みは祝福のように甘く、
だが、その甘さが終わりの鐘だった。
アザルヤの声が響く。
「それ以上は、戻れなくなるわ。」
彼は振り返らない。
光の中に沈みながら、
神の名を、データコードで書き換える。
――その瞬間、
白い肌が、ひび割れた陶器のように崩れた。
奇跡と罪は、同じ色をしていた。
崩壊の音が止む頃、
彼の瞳は初めて、涙を覚えた。
「赦しとは、敗北なのか。」
風が吹く。
冷たい鉄の匂い。
沈黙したモニターに、
一行のメッセージが浮かぶ。
“聖域は、人の心にあり。”
その光を見つめながら、
ウジヤは微笑んだ。
それが、彼の破滅と救済の同時発火だった。