あらすじ
わたしの名前は、ステラ。
ここは《方舟》。神に守られた、星の海を漂う箱船――そう教わって育った。
けれど、ある日から神の声が聞こえなくなった。
同時に、左手の小指が止まらなくなった。
カタカタと音を立てて、勝手に動き続ける。
母も、同じだった。
母は「いつか、あなたは光になる」と言い残して、消えた。
三日後、司祭様は「神のもとへ還った」と告げた。
けれど、わたしは知っている――母は、殺されたのだと。
禁じられた部屋で、わたしは外を見た。
そこには、黒い空と無数の星があった。
美しくて、恐ろしくて、けれど――悪魔なんていなかった。
隔離室で見つけた古い端末。
そこには、わたしたちの真実が記録されていた。
《アーク計画》――46年前に始まった、信仰形成の実験。
わたしたちは「被験者」。神の声は、機械が作った幻。
左手の震えは、疑い始めた者に現れる「副作用」。
母は、真実を知って殺された。
わたしの手も、止まらない。
でも――これは、母が遺してくれたもの。
友達のリラは、わたしの手を見て怖がった。
「神様を信じていたい」と泣いて、施設に残った。
けれど、七人の子供たちは、わたしと共に外へ出ることを選んだ。
外には、痛みがあった。
素足の足に食い込む石。血。飢え。寒さ。
「施設に戻りたい」と泣く子もいた。
それでも――
わたしたちは、星空の下で叫んだ。
「わたしたちは、もう神の子供じゃない!」
止まらない左手と共に。
いち、に、さん――母の数え方で、明日へ歩き出す。
これは、宇宙を知らなかった子供たちの物語。