あらすじ
悪役令息 『炎上する舞台(アルス・アルデンス)~ネロ・クライシス~』
白い指が、黒薔薇を折る。
香りは甘く、毒は静かに滲む。
誰もいない舞台で、彼は呟く。
「拍手がなければ、生きた意味がない」と。
光は、炎に変わり、
炎は、歓声に変わる。
――そして歓声は、嘘を飲み込み、沈黙に溶けた。
彼の涙はガラスのように冷たく、
蝶はその頬に降り立つ。
「お前も燃やすのか」と問えば、
蝶はただ、羽音で答えた。
報道のペンは刃のように走る。
ルキアの言葉が、真実を裂く。
だがその紙面の裏で、
彼の孤独が、ゆっくりと微笑んでいた。
――美とは、誰かの涙を礎にしてはならない。
遅すぎた遺言は、灰の中に響く。
夜明け、
燃え尽きた黄金宮の跡に、
ただ一輪、
黒薔薇の影を抱く白い花が咲いた。