あらすじ
(冒頭)
人は、過去を忘れて生きることができる。しかし、過去が消えることはない。ドラゴンボールという物語の中で、この問題を最も象徴的に体現しているのがベジータという存在である。ナメック星での彼はまさに「悪」であった。ドラゴンボールを奪うためにナメック星人の村を襲い、抵抗した戦士を前に冷たく笑って放った言葉――「じゃあ、死ね!」。その一言に迷いも痛みもなく、ただ自分の欲望と野心のために命を奪った。あの瞬間、彼の心には正義も哀れみも存在しなかった。だがその同じ男が、後に「地球のために戦う戦士」として描かれる。かつて殺戮を繰り返した者が、悟空や仲間たちと共に様々な敵と戦い、地球を守る立場になる。少年漫画の文脈では、これは“成長”として肯定される。しかし、倫理という視点から見ると、そこには大きな齟齬がある。