あらすじ
ノルヴェルの町は、いつも風が穏やかだった。
遠くで鐘が鳴り、洗濯物が陽を浴びて揺れる。
エリシアはその光景を見ながら、もう何年も前の戦いを思い出すことはなくなっていた。
ただ、あの頃の誰かたちの声だけが、時々、風の中にまぎれて聞こえることがある。
双子の子供――ルミナとヴェント。
姉は光のようにまっすぐで、弟は風のように落ち着かない。
二人は、いつの間にか世界の形を少しずつ知っていく。
学園の鐘の音、家の扉の音、森のざわめき。
それらが、どこか遠い冒険の始まりをゆっくりと呼んでいた。
ルミナは誰よりも早く空を読む子で、
ヴェントは誰よりも早く風に走る子だった。
けれどその風が、どこへ吹いていくのかはまだ誰にもわからない。
たぶん――この世界はまだ、静かな夜明けの途中なのだ。