あらすじ
三歳の春に母親が病死した。そのあとに再婚した後妻との間に、義妹の次女が誕生して―――存在を忘れられた。
せめての救いは、尋常小学校で仲良しだった親友二人と過ごした時間。
『無駄な金をかける必要はない』
女学校に通わせてもらえず、美沙はわずかな生活費を渡され別邸に住まわされた。完全に、存在を忘れられた。
それから、数年が過ぎた昭和二十年十一月下旬、美沙に縁談がくる。
それは帝国海軍少佐・沢城時致との縁談だった。
爵位はないが土地を多く所有し、莫大な資産を持つと噂の沢城家の嫡子との縁談に美沙を嫁がせることにしたのだ。
優しく穏やかな時致との日々は、愛されなかった傷を抱える美沙の心を癒やしていく。