あらすじ
路地裏の古書修復工房。修復士の綾(34)と助手の果歩(26)――血の繋がらない“擬似姉妹”は、上書き写本(パリンプセスト)の修復に向き合う。
膠のぬめり、和紙の繊維、湿り、圧、光。〈触れずに触れる〉手仕事が官能を代替し、最小介入/可逆性という修復倫理は、二人の関係がもつ不可逆と衝突する。
展示期限が迫るなか、下層から浮上する一文――「わたしは姉を愛している。」
彼女たちが選ぶのは、記録か、それとも記憶か。
(用語解説)
「最小介入/可逆性/記録」**は、文化財保存修復(特に書物・写本)の“金の三角形”。
・最小介入(Minimal Intervention):必要最小限の処置で目的を達し、オリジナル材料・情報への攪乱を極小化すること。
・可逆性(Reversibility)/可撤性・再処置可能性(Removability / Retreatability):後日、処置を取り除ける/やり直せるようにすること。
・記録(Documentation):処置前・処置中・処置後の観察・判断・試験・作業内容・材料・条件を、画像・テキストで正確に残すこと