あらすじ
無実の罪で故郷を追われた一人の青年、リオン。彼には、物に宿る“記憶”と“声”を聞く、呪いとも祝福ともつかぬ秘密の力があった。
孤独な旅路の果て、彼は自らの力を「真実の目」として受け入れ、鉄の町で「道具の医者」として静かに人々の暮らしを支え始める。彼の手にかかれば、古びたクワは大地を甦らせる奇跡の農具に、使い古された道具は持ち主の魂が宿る唯一無二の相棒へと生まれ変わる。
その評判は、やがて国を揺るがす大きなうねりとなり、彼を追放した過去、そして王国の運命と対峙させることに。
これは、誰にも理解されなかった孤独な青年が、復讐ではなく、ただひたすらな善意と類まれなる技術によって、静かに世界を救い、英雄となる物語。暴力も魔法も使わない、心温まる逆襲譚が、今、幕を開ける。
【登場人物紹介】
◆リオン・ベルト
本作の主人公。燃えるような赤毛を持つ、控えめで心優しい青年。物に触れることで、そこに宿る記憶や感情を読み取る特殊能力「真実の目」を持つ。無実の罪で故郷を追放されるが、その能力を活かして伝説的な職人へと成長していく。
◆ミラ
リオンの幼なじみで、パン屋の娘。追放されたリオンの無実を唯一信じ、彼の心の支えとなった、芯の強い少女。
◆ダグ
鉄の町ゴルダで鍛冶屋を営む、熊のように大柄な職人。口は悪いが情に厚く、リオンの才能を見抜き、弟子として受け入れる。リオンにとっての師であり、父親のような存在。
◆エルミット
旅の途中でリオンが出会う、博識な賢者の老人。リオンの能力を「真実の目」と名付け、失われた『古代の鍛冶術』を託し、その後の彼の運命を大きく変える。
◆ヴァイン侯爵
エーデン村を治める領主。息子の死に動転し、リオンを追放した張本人。後にリオンの起こす奇跡の噂を聞き、彼の前に再び姿を現す。
◆アルフォンス三世
サーベリアン地方を統べるアステル王国の国王。賢王として知られ、リオンの類まれなる才能と高潔な信念に感銘を受け、彼を国の要職に抜擢する。