あらすじ
高校生の千尋は、人形に宿る声を聞き取る特別な力を持ち、工房で祖父から受け継いだ「音色収集家」として人形の記憶を記録していた。ある日、青いドレスのオルゴール人形リナから、少年が繰り返す「ありがとう、また明日」という声を聞き、胸に覚えのある懐かしさを覚える。
一方、クラスメイトの蒼太も小学校時代の記憶が抜け落ちており、千尋と同じく音楽を通して不思議な既視感にとらわれていた。二人が共に演奏をした瞬間、幼い頃の自分たちの姿が閃き、失われた過去の扉が開き始める。工房に戻った千尋は人形に触れ、幼い自分――本当の名リナ――の声を聞く。それは蒼太と交わした、永遠に一緒にいるという約束だった。さらに人形の記憶は、自分たちが「音響記憶操作実験」の被験者であったことを示す。特殊な聴覚能力を持つ子どもたちは記憶を削除され、社会に戻されたのだった。
千尋と蒼太は廃墟となった研究所を訪れ、仲間の子供たちの最後の声を人形から聞き、真実を知る。だが愛の記憶は完全には消えず、人形が二人を再び結びつけたのだった。二人は人形に宿る声を音楽に変換し「失われた声プロジェクト」を始める。母への子守唄、友との約束、家族への愛――楽曲は人々の心を揺さぶり、同じ実験を受けた者たちの記憶を呼び戻す。音楽を通じて再会や和解が生まれ、愛が失われた記憶を取り戻していった。
やがて政府による圧力もあったが、世間の支持は二人を守った。高校最後の文化祭で開いたコンサートでは、過去の楽曲に加え自らの「永遠の愛の歌」を奏で、会場全体が一つの楽器となる奇跡の瞬間を迎える。記憶は消されても愛は消えない。やがて大学に進学した二人は世界中から寄せられる人形の声を音楽に変え続け、やがて結婚し、新たな人生を歩み始めた。リナの人形は今も回転し、永遠の愛を見守っている。