あらすじ
「どこかを軽くしたら、どこかが重くなる。今は私が少し持った」
蒸気機械の街では、すべての命がぜんまい仕掛けで動いている。
前借りした回転は、必ず返さなければならない。
返し方を誤れば、命が削れる。
清算課のイリス・ヴァーレは、街の「針の調律師」。
困窮した家族の重い針を、古い規格の部品で軽くする。
その代わり、自分のぜんまいを少しだけ巻き戻して──。
ある日、下層で出会った少女ミナが言った。
「あんたのやり方を覚える。うちの針は、うちで回す」
誰かが背負わなければ、街は回らない。
けれど、回し方は変えられる。
これは、命の勘定が数字で見える世界で、
それでも「やり方」を探し続ける人々の物語。