あらすじ
単身でダンジョン最下層に到達し、魔神を討ち取った英雄、俺――カイ。
しかし、魔神の最後の呪いによって死んだ俺が再び目を覚ました時、そこはダンジョン入口、駆け出しの頃に寝床にしていた小さな洞窟だった。
レベルは1に戻り、血のにじむような努力で手に入れたスキルはすべて消滅。持っているのは、使い古した一本のナイフと、最下層までの全ルートを記憶している「知識」だけ。
「もう戦うのはうんざりだ…」
英雄として生きることに疲れ果てていた俺は、第二の人生をこのダンジョンで静かに暮らすことに決める。
幸い、最下層まで踏破した経験から、どのモンスターがどんな味で、どの階層の植物が最高のスパイスになるかを熟知していた。
――かくして俺は、冒険者たちが集う第一階層に、小さな屋台を開いた。
メニューは一つだけ。「ゴブリンの肉とスライムゼリーの串焼き」。
初めはゲテモノだと敬遠されたが、魔獣の特性を知り尽くした完璧な下処理と絶妙な味付けが評判を呼び、屋台はたちまちダンジョン名物となる。
これは、最強の英雄だった俺が、厨房では最弱の包丁一本から始め、モンスターや亜人といった、かつては敵だった者たちに絶品ダンジョン飯を振る舞い、種族を超えた絆を育んでいく、異色のダンジョン・スローライフ。