あらすじ
【遠くから呼ぶ聲】
雨の日だった。路彦は『遠くから呼ぶ聲』を聴いた。
路彦は、次なる跳躍台が欲しかった。
夜のハイウエイを
中古のキャンピングカーで三人旅が、始まった。
長崎から千百キロ、能登半島を目指す。
そこには寺田路彦(みちひこ)のまだ見ぬ姉(異母姉弟)がいる。
旅の三人は路彦、里村くん、それにヤーシャンだ。
車外の闇が仄白い光の輪に包まれては、
後方へ後方へと消えてゆくのと逆に、
過去が次々と手繰り寄せられ蘇る。
能登への道に連なる出来事への、路彦の回想は続く。
マーシャンのこと、自分のこと、雪山で遭難死した父のこと、
母のこと。里村くんのこと。妻・秋子のこと。
いよいよ能登に到着。
そこで待っていたのは……。
そして、車のナビを帰路にセットした。
里村くん、ヤーシャンは、ほんまもんの世の中
(暗黙の了解で成り立った虚構社会だが)
へ二人でゆくことを決めた。
春まだ冷たい空の向こうから、
巫女鈴の音が聞こえてきた。