あらすじ

しがない田舎の貧乏男爵家の次男・レノは、家名も地位も望まず、血の繋がらない家族と共に穏やかな日々を送っていた。そんな彼のもとに、ある日突然王宮勤めの青年・アステルが現れる。「私には同じ生を少なくとも三度繰り返した記憶があります」──謎めいた告白を皮切りに、レノの人生は思いもよらぬ方向へと転がり始める。 アステルの記憶によれば、彼の持つ過去三度の生において、レノは王国の最上級賓客である聖女・イリスを殺めてしまっていたという。そしてその事件が引き金となり、世界は巻き戻され、彼らは再び同じ生を繰り返す運命に囚われていると。レノ自身にその記憶はないが、アステルの確信と狂気にも近い執念に押されるように、彼は「今生こそ聖女を殺さず、二度と不毛な生を繰り返さない」という命題に巻き込まれていく。 非常識で掴みどころのない第二王子・エメリクに連行され、王宮へと足を踏み入れたレノは、否応なく王国の中枢に引き込まれる。王宮内外では王位継承権争いや貴族間の軋轢が渦巻き、聖女の居所を探すどころではない混乱が続く。だがアステルはそんな中でも、過去の生でレノが発案した「戸籍制度」など革新的なアイデアを今生に導入し、民の記録を洗い出すことで聖女の痕跡を探ろうとする。 協力者を得ながら奔走する二人だったが、やがて彼らはある結論に辿り着く。 ──今生には、聖女イリスが存在しないということに。 では、殺すべき聖女がいないこの世界は“正解”なのか。 それとも、より深い運命の罠なのか。繰り返される生の中で、レノが背負う罪の意味とは何か。そもそもアステルの繰り返す生の記憶は真実なのか。王宮の奥底で眠る因果の綻びの中、「聖女を殺さないために聖女を探す」──そんな逆説的な旅路の果てに、レノとアステルが見出すものは、贖罪か、それとも新たな破滅か。 輪廻の歯車が静かに軋む音が、森に囲まれたヴェルデルム王国に響き始める。そして、ついに二人は決断する。 「今生は諦めて、来世でよろしく」。 レノは己を取り巻く登場人物たちと共に今生の運命の答え合わせをはじめる。 今度こそ、最後の人生を終えられるか。貴族らしくない、奇妙で愛おしい彼らの今生が少し騒がしく、幕を開ける。 そしてその幕の向こうでは、まだ誰も知らない“今生の真相”が、静かに息を潜めている。それは偶然か、運命か、あるいは何者かの罠か──。

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カクヨム
カクヨム2025/09/05
  • 現在の作品国王補佐官殿、来世について話し合いましょう