あらすじ
完全不落城塞都市ヴィセ。
二十四の城壁。約十二万人の兵士。
そして、籠城戦ではヴィセ国に暮らす全員分の、また家畜や餌となる飼料を、十年間は食べていける大量備蓄倉庫や三十六か所の井戸、大量武器・防具材倉庫等を備えている。
この都市の王宮の第七王女マナ。王女といえど七番目ともなると、王宮の王女としての扱いではなかった。
マナは自分の居場所として王宮の深部の書物庫で毎日朝から晩まで三人の近衛兵と三人の下級の兵士がつきっきりで書物を読みふけっていた。それも「戦術」「攻防戦」「奇襲」の類だった。
最初は六人の兵士はマナが直接、特任の直属の兵士として就いた兵士達だった。
そのマナの書物庫での行動を長年見ていた兵士達はあることに気づいた。
マナは一冊の書物を一回しか読んでいない事。
それは、騎士や兵士の一騎討ちのように、一度使った戦法は同じ相手には二度と通じない事と同義である。
マナとっては目の前の書物を読むことが、その時にしか得られない知識や考え方を理解し覚える機会だ。
どんな勝負でも一回切り。それを書物を読むことにかけていたのかもしれない。
六人の兵士はそう思い始めた。
それと同時に、
「この第七王女は"指揮官"を目指しているかもしれない」
だとしたら、何故従事者ではなく自分達兵士を常に身の周りに置いたのも理由として充分だ。
戦場で働くのが本職の自分達なのだから。
そんな日々に来襲者の鐘の知らせが城塞都市ヴィセに鳴り響いた。
その時マナは、
「丁度最後の書物を読み終わったわ。さあ、行きましょう。私達がヴィセ国を護るための戦場へ!」
マナはまだ十一歳の少女。しかし『指揮官』の表情でそう一声、六人の兵士に声を掛けて、その後『奇守姫』と呼ばれる少女マナは一度も振り返らずに戦場に向かって走り出した。