あらすじ
黎進高校に通う帰野玖郎は、自称「帰宅部探偵」。
ある日の放課後、彼は新聞部の福山しおりに呼び出される。
「理科準備室でチョークが消えたんよ。これ、事件じゃと思わん?」
どうでもよさそうな出来事を前に、玖郎の目が光る。
「つまりこれは――完全犯罪の匂いがする!」
大げさな推理と不可解な理論を展開しながら、しおりを巻き込んで“現場検証”を始めるのだった。
一方でしおりには、もう一つの悩みがあった。
校則で禁止されているピアス。
風紀委員に注意されて落ち込んでいたところを、玖郎が突拍子もない言い訳で庇ってくれる。
その言葉にしおりは思わず赤面するが、本人はいたって真剣顔だ。
結局、チョーク紛失の真相は――ただの風や偶然で片づく小さな出来事。
だが、玖郎の“暴走推理”としおりのツッコミは、今日も終わることなく続いていく。
放課後の校舎を出た瞬間、灰色の空は雨を告げていた。
傘を忘れた福山しおりに、帰野玖郎はさりげなく傘を差し出す。
けれど、素直に「ありがとう」と言えない彼女は、逆に傘を玖郎へと差し掛ける。
ふたり分には少し狭い傘。肩が触れるか触れないかの距離。
沈黙のなかで交わされる視線や水滴は、推理より雄弁に心を語っていく。