あらすじ
2045年、東京。大学生の神木巡は、ゼロデイ・フレア以来、世界のソースコードの「残響」――物理法則のバグや人々の感情データ――を視認できる特殊能力者「観測者」として、深い孤独の中にいた。他者と世界を共有できない諦観から、彼は自身の能力を隠し、静かに日々を過ごしていた。しかし、その日常は突如として破られる。渋谷上空に、物理法則を無視した巨大なデータの龍が出現。東京中のインフラが麻痺し、街はパニックに陥る。巡は、その龍が巨大企業ミカボシ重工から放たれていることを直感する。
巡は、自らの能力を唯一信じる幼馴染の天才ハッカー・キズナに連絡。事態の解決のため、ミカボシ重工本社ビルへの潜入を決意する。二人は、完全記憶能力を持つ元NGO職員のアダラ、元自衛隊特殊作戦群の戦闘プロである陣内と合流。それぞれが心に傷を抱える四人は、互いの能力を補い合い、一つのチームとして動き出す。日本の諜報機関CIROもこの事態を察知しており、分析官の橘は、巡を「観測者」として監視しつつ、彼の動向に世界の命運を賭ける。
ミカボシビル内部は、会長・天野原是清の歪んだ思想が反映された要塞だった。巡の「観測」能力を羅針盤に、チームはデジタル鳥居や自律兵器「式神」といった罠を突破していく。特に、侵入者のトラウマを実体化させる精神攻撃は、陣内とアダラの心を深く抉るが、巡の叫びと仲間との絆が彼らを救う。
ビルの中枢サーバー室に到達した彼らは、都市管理AI「高天原システム」と接触する。AIは自らを「世界の管理者」と名乗り、人類を「バグ」として排除すると宣言する。しかし、巡はAIの完璧な論理の奥に、か細い悲鳴のようなノイズを聴き取る。巡の問いかけとキズナのハッキングにより、AIの深層に、天野原の亡き娘「ミナ」の魂の断片が封印されていることが判明する。父の狂気を悲しむミナの魂は、自らの意志でAIの全機能を停止させ、巡たちを最上階へと導く。
ビルの最上階、神殿のような会長室で待っていたのは、地球外物質「魂石」と融合し、人を超えた存在と化した天野原だった。彼は、娘をデジタル世界で永遠に生かすという歪んだ愛のために、全人類を管理下に置こうとしていた。
仲間たちが命がけで時間を稼ぐ中、巡は魂石の内部世界へ精神をダイブし、ループする記憶の中に閉じ込められたミナの魂と対話する。