あらすじ
──これは、ただの政略結婚だった。
名も捨て、国も捨て、生き延びるために、私は偽りの姫となった。
銀月の国へ嫁いだ王女フィリア。
その正体は、かつて銀月に滅ぼされた緑の国の第一王女・オフィーリア。
今は誰も知らない。知られてはいけない。
偽りの微笑を浮かべ、丁寧にふるまい、感情はすべて押し殺して──弱さなんて見せない。
「完璧な姫」を演じることだけが、自分を守る手段だった。
けれど。
夫となった銀月の第一王子・セヴィだけは、
私の“嘘”に、なぜか気づいてしまう。
「おまえのその嘘くさい笑顔を見ていると、どうにもイライラする」
「君が助けて、と言ったら俺は──何も聞かずに君を助ける」
冷たいと噂される“氷の王子”。
優しいのか優しくないのか、よく分からない。
分かっているのはあなたにもきっと''過去''があること。
──私の心が壊れていくのを、どうしてあなたが先に気づくの?
過去の傷と、王宮の陰謀。
兄弟の確執、王家に渦巻く毒と欲。
嘘を重ねて生きる私と、痛みを抱えて生きる彼。
ふたりの恋は、決して祝福されない。
けれどもし、それでも――
もう一度誰かを信じてもいいのなら。
私は、あなたにだけ、本当の名前を呼んでほしい。