あらすじ
『村一番のわる』
村一番のわる
それが私の名札だった
幻の声に追われて
夜道を走り
冷たい星にすがると
「また家出だ」と笑われた
泣かなければ冷たいと言われ
泣きすぎれば「罪の証」と責められた
涙の温度は
誰にも測れはしないのに
噂は風より早く走り
事実は土に埋められていく
善良という旗の下で
人々は石を投げた
けれど
私は知っている
あの日の空の色
川面に揺れた光
そして
母の沈黙の中で
確かに生きていた自分を
村一番のわる――
その写真しか残らないなら
私は自分のレンズで
未来を撮るだけだ