あらすじ

文明開化の華やかな光と、古からのあやかしが息づく闇が混在する街、帝都・東京。 帝国大学に通う書生・三上玲(みかみ れい)は、その身に「外つ神(とつかみ)」と呼ばれる異界の存在を呼び寄せてしまう呪われた血筋「星詠みの巫子(ほしよみのみこ)」の宿命を背負っていた。家族からも疎まれ、孤独に生きてきた彼は、自身の血の秘密を知らぬまま、レポートの資料を探しに神保町の古書店『うつろ舟』の扉を叩く。 そこで玲が出会ったのは、この世のものとは思えぬほど美しく、そして夜の湖のように静かな瞳を持つ店主・黒崎奏(くろさき かなで)だった。奏は玲の血に宿る呪いを一目で見抜き、「二度と来るな」と冷たく突き放す。しかしその直後、玲は「外つ神」を崇拝するカルト教団「星辰結社」の罠にはまり、呪いの洋書を手にしたことで、おぞましい悪夢に苛まれることになる。 日に日に衰弱し、意識が朦朧とする中で、玲が助けを求めたのは、なぜかあの冷たい店主・奏だった。『うつろ舟』の前で倒れた玲を介抱した奏は、その正体を明かす。彼は千年を生きる九尾の妖狐であり、玲の一族と古の契約を交わし、暴走する「星詠みの巫子」を律する「番人」だったのだ。 「お前のその呪われた宿命、この俺が引き受けよう」 奏は玲のすべてを奪うかのように、甘く危険な庇護を宣言する。店の奥にある居住区に玲を住まわせ、悪夢から守り、手ずから作った食事で弱った体を癒していく。それは「餌付け」と称した、千年分の孤独を埋めるかのような過保護で不器用な溺愛だった。奏の鳥籠の中で、玲は生まれて初めての安心感と温もりに触れ、抗いがたく惹かれていく。 しかし、穏やかな日々は続かない。帝都では「星辰結社」が引き起こす怪事件が頻発。玲は書生としての知識を活かし、奏の隣で事件解決に奔走する。絶対的な妖力で怪異を薙ぎ払い、自分を守るために戦う奏の姿に、玲は憧れを恋心へと変えていった。 だが、教団の巧妙な罠により、玲はついに拉致されてしまう。玲を「我らが神を降ろすための聖なる花嫁」と呼ぶ教祖は、玲の血を使い、帝都を破滅させるための降臨の儀式を始めるのだった。 愛しい存在を奪われた奏は、千年の冷静さを失い激昂する。九尾の正体を現した彼は、帝都を揺るがすほどの妖気を放ち、ただ一人、玲を救うために敵の元へと向かう。 「――よくも俺の番(つがい)に触れたな。塵も残さず消し去ってやる」 これは、呪われた運命を背負う健気な書生が、孤独だった千年妖狐に見初められ、その生涯ただ一人の花嫁として娶られるまでの、甘く切ない宿命の恋物語。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2025/09/03
  • 現在の作品帝都あやかし書譚 ~呪われし書生は千年妖狐に娶られる~