あらすじ
三百年前、ひとりの娘がいた。
名もなき農夫の娘リディア。彼女は愛する青年を信じ、花冠を編ぎ、未来を語り合った。だがその青年は裏切り、魔女狩りの狂気の中で彼女を「魔女」として告発した。群衆の罵声と歓喜に包まれ、彼女は杭に縛られ、炎に呑まれ、絶望と憎悪を胸に果てた。――それが、すべての始まりだった。
そして時は流れる。王都レガリア、建国三百年祭を控えた繁栄の時代。
病に伏して死にかけていた王妃の体で、彼女は目を覚ます。再び目を開けたのは、豪奢な王宮の寝台。看病していた女官長セラフィナ、血の匂いを漂わせる近衛兵長ガレス。そこにあったのは、かつて自分を焼き殺した国の末裔たちの繁栄だった。
彼女は名を変え、モルガーナ=ヴェスペリアとして甦る。
神か、悪魔か、何がこの機会を与えたのかはわからない。だがひとつだけ確かなことがあった。――必ず、この国を呪い滅ぼす。恋も誓いもすべてを毒と呪いに変え、断罪の名の下に。
裏切りの王子を、その血族の王を、そしてこの国そのものを。
女王として君臨したモルガーナは、陳情、密告、目安箱に寄せられる愛憎の物語を裁きに変え、残酷な処刑で人々を次々と断罪していく。花嫁は鉄の棘に抱かれ、偽りの誓いを交わした者は首環に絞め殺され、甘い恋の結末は必ず血と灰に帰す。
愛を裏切る者は許さない。掟を破る者は見逃さない。
理不尽に火あぶりにされた一人の娘が、今や国を呪う「断罪女王」として甦った。
――甘美なる恋の裏側で、必ず訪れるのは残酷な断罪。
あなたはこの裁きを見届けられるだろうか。