あらすじ
伝説的な歌姫を母に持つ、白河琴音。幼い頃からその才能を認められ、将来を嘱望されていた彼女は、いつしか「歌姫の娘」として世間の期待を背負うようになっていた。しかし、最愛の母の死をきっかけに、琴音は歌を歌えなくなった。
母の死後、世間の目は冷たくなった。「歌姫の娘が歌えないなんて」「才能は遺伝しなかったのか」。心ない言葉が、閉ざされた琴音の心をさらに深く傷つける。歌うこと、それは母との唯一の絆だった。その絆を失った今、琴音にとって音楽は、希望ではなく、ただの重荷でしかなかった。
そんな日々を送る中、琴音は言葉を持たない少年、藤原優と出会う。優くんは、言葉の代わりに、日々の出来事や感情をスケッチブックに描き、琴音に語りかけてきた。彼の描く絵は、琴音のモノクロームだった世界に、少しずつ色を灯していく。
歌姫の娘という重圧から解放され、ただ一人の人間として優くんと心を通わせるうちに、琴音は忘れかけていた「歌うことの喜び」を思い出す。それは、誰かに評価されるためでも、母の影を追うためでもない、自分自身の心から湧き上がる純粋な想いだった。
優くんとの出会いが、琴音の人生のメロディを再び奏で始める。これは、偉大な母の影に苦悩し、声なき歌姫となった少女が、小さな光に導かれ、自分自身の歌を取り戻すまでの、再生と成長の物語。そして、彼女の歌声は、やがて世界へと響き渡る。