あらすじ
十九歳の音大生、篠宮音羽。
芸大ピアノ科に在籍し、ショパン国際ピアノコンクールで優勝。
「クラシックのプリンセス」と讃えられ、世界中から喝采を浴びる彼女には、誰にも言えない秘密があった。
――心の中には、もう“音”が聴こえない。
拍手も、称号も、空虚を埋めてはくれなかった。
ただ、形に縛られない、自由な音を探していた。
そんな夜。
音羽は東京の片隅で、一人の青年と出会う。
名前は榊原 真。
浮浪者のような風貌、荒れたギター、掠れた声。
誰も見向きもしない路上の歌。
けれど――その一音は、世界を裏返した。
「笑うたび 泣きそうで
世界の拍手に包まれても
心は裸で 凍えてた」
不器用で、未完成で、なのに抗えない。
人々の心を震わせるその音に、天才ピアニストは涙を流した。
自分よりも本物の天才を見つけてしまった衝撃。
そして、衝動のように口をついて出た言葉。
「……わたしと、一緒に音楽しませんか?」
クラシックのプリンセスと、路上の放浪者。
世界で最も不釣り合いな二人の出会いが、
音楽の伝説を鳴らし始める――。