あらすじ
薄暗い土間で目を覚ました。埃っぽい空気が鼻をつき、体中が痛む。記憶の断片が、まるで劣化したゲームデータのように、断続的に蘇る。山田健一、35歳、サラリーマン。そして、『やり込み好きのあなたへ』という謳い文句のサイト……
何が起きたのか理解するのに時間がかかった。あのサイト、あれは冗談じゃなかったのだ。現実逃避のつもりでクリックしたリンクの先は、異世界への片道切符だった。今、私はアレンという名前の農奴として、この世界の埃っぽい土間で息をしている。
周囲を見渡す。粗末な木造の小屋、土壁にはひび割れが走り、窓枠からは冷たい風が吹き込んでいる。身につけている服は粗雑な麻の着衣、腹は空腹で鳴り響く。まるで、十年前、二十年前のゲームショップの棚に並んでいた、パッケージすら古びたRPGの序盤のような状況だ。あの頃のワクワク感とは全く異なる、生々しい恐怖と絶望が私を襲う。
この世界は、剣と魔法の世界らしい。少なくとも、私の頭の中に残っている断片的な記憶はそう告げている。召喚士によって呼び寄せられた、と。しかし、召喚士が誰なのか、この世界のルールは何か、何も分からない。レベル、ステータス、スキル…...