あらすじ
目を覚ますと、そこは一面に広がる緑の草原だった。見慣れない花々が咲き乱れ、空は澄み渡り、太陽の光が温かく肌を包む。十年間の闘病生活で弱り切った体には、不思議な軽やかさがあった。現代の病院の白い壁ではなく、爽やかな風が吹き抜けるこの場所で、私は息を吸い込んだ。
記憶を辿る。激しい痛みに襲われ、意識を失った。そして、この異世界。不思議なことに、体は二十歳頃の若々しさを取り戻していた。闘病中、唯一の心の支えだった、アイドルが農業をするテレビ番組。あの番組の情景が、今、現実のものとして目の前に広がっているような気がした。
「……まさか、本当に異世界転移なんて…」
呟くと、近くにいた小柄な女性が驚いた様子でこちらを見た。彼女はエルフのような尖った耳と、輝くような緑色の瞳を持っていた。美しい顔立ちに、一瞬息を呑んだ。
「あなたは大丈夫ですか? 転移してきたばかりのようですが…」
彼女は優しく声をかけ、私の様子を心配そうに伺った。どうやら、この世界の人間らしい。彼女は自分の名前がリリアだと告げ、親切にも近くの村まで案内してくれた。村は、中世ヨーロッパのような趣で、石造りの家が立ち並び、人...