あらすじ
現代版『失われた時を求めて』
カフェの片隅で
スプーンを入れたプリンの甘さが
ふいに幼い夏を呼び戻す
祭囃子と祖母の声
汗ばむ掌に冷たいラムネのビー玉
時は直線ではなく
スマホの画面に散らばる通知のように
ふとした瞬間に
過去と今が交差する
夜更けのタイムラインは
笑顔の仮面で飾られた社交界
だがスクロールの奥で
わたしは虚無の海に漂っている
アルバムを開けば
母の若き日の瞳が
まるで知らない女のひとを映し出す
その時間もまた
わたしの血に流れ込んでいる
愛は失われてゆく
だが言葉にすることで
再びここに生まれ直す
記憶は沈黙せず
今を生かす糸となる
だから、わたしは書く
失われたものを
求めながら、編みながら
——そのすべてが
まだここに、確かに息づいていると信じて。