あらすじ
現代版『城』
雪に埋もれた町の中心に
ガラス張りの庁舎がそびえている
誰もが「城」と呼ぶその建物は
入口が開いていても 中には入れない
番号札を握りしめ
呼ばれることのない名を待つ
スピーカーから流れる声はいつも同じ
――ただいま審査中です、お待ちください
廊下は迷路のように分岐し
窓口の奥には窓口が続き
紙は紙を呼び
印鑑は印鑑を否定する
秘書の微笑みは
やさしさか、それとも壁か
恋さえも承認印を求められ
ためらいの赤いスタンプが
心の真ん中に押される
夜、吹雪の中をさまようと
庁舎の灯が遠くに瞬き
それは灯台のようで
蜃気楼のようで
「まだここに居てもよい」という幻に変わる
答えは来ない
けれど人は去れない
だからKは小さな火を灯し
自分の存在を暖める
――承認されなくても、生きていると証明するために