あらすじ
俺には”推し”がいる。アイドルグループ KAREN のセンター、コノミ。
絶賛人気沸騰中で、先日は武道館で単独ライブを成功させるまでに成長した今や日本を代表するアイドル。今度は新アルバムを引っ提げて、全国五大都市でライブツアーを開催する。
もちろん、最新情報はチェック済。そんなアイドルを俺は日本全国、隅々まで追っかけている、ドルヲタ。
「おまいつ(=お前どこにでも居るな)」って言われれば一人前の世界。負ける気は無い。
なんせ、何を隠そうセンターのあの子は推しの前に「俺の妹」である。同じ釜の飯を食う家族なのだから、不戦勝もいいところだ。
血縁関係にある事実は隠している。妹の活動に影響が出てしまうことも鑑みて、最善の嘘だと思っているからだ。早々に一般観客席をこっそり運営から融通してもらっていることだけは読者諸君とヲタ友皆の衆に懺悔しておきたい。ごめん。
コノミが売れない時から、一緒に追いかけている仲間は、ほとんどが飽きて応援するのを辞めた。不思議な話じゃない。人気商売はどこも似たり寄ったり。でも昔と変わらず、KARENを追いかけている女ヲタの”雪(ユキ)さん”は俺と一緒のおまいつ。彼女の推しは俺と同じ。我が推しグループに推し被り憎悪の文化無し。推しを語り合う時間が何よりの栄養だ。
雪さんは地元密着型アイドルを一年前に始めた。心底俺の妹に憧れており自分も元気を与える存在になりたい!と一念発起。アイドルのヲタクから実際にアイドルになったのだ。最初に相談を受けたときは正直びっくりした。熱心なヲタクをしていた信頼感が俺に打ち明けても変わらずKARENを愛して他界しないで居てくれるだろうっていう理由。
アイドル現場では推しアイドルをそっちのけにして男ヲタが女ヲタに手を出すこと、通称「女ヲタヲタ(=女ヲタクのヲタク)」なんて呼ばれ方をする。でも、ちょっと待て……
そういえば君にも君と推してきたアイドルが「俺の妹」なんて打ち明けたことはなかった。
アイドルは夢を売る商売。特定の一般人と、接触を持つことはご法度。
それは十分に理解している。
でも俺にとって君は、最初は女ヲタの友達だったじゃないか――
これは、とあるドルヲタの葛藤。育んだ愛の行く先の話。純愛と言うには歪。だけど不純であるとは言い難い。物語の翌日に”彼女”になる雪さんとの綱渡りの愛のお話。