あらすじ
暗室の赤い灯の下で恋をした。フィルムを一本だけ丁寧に使う彼女・新井莉央と、ただいま/おかえりを合図に過ごす日々。——ある日、藤川湊は事故で2004年の夏へ落ちる。そこで出会ったのは、莉央に酷似した目を持つ若い女性・宮本奈緒。彼女はやがて“莉央の母”になる人だった。
奈緒の向ける好意に、湊は応じない。応じた瞬間、現在の莉央が「写真」と「メッセージ」から薄れていく——そう確信したからだ。湊の役目はひとつ。自己否定に沈む青年・新井悠真(のちの父)を背中から支え、好きの行き先を正しく返すこと。
手紙と言葉の練習、ローズマリーの香りの喫茶店、布ストラップ、風鈴。小さな工夫を積み重ね、やがて迎える「光が余る夜」——夏祭りの写真コンテスト。湊は主役にならず、二人を同じ一枚へと導く。
帰還の先にあるのは、暗室の灯と「おかえり」。写真とことばで未来を守る、純愛タイムリープ。